コロナ禍において銀行は企業の倒産防止を目的に、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)等を活用して資金繰り支援を行いました。中小企業庁金融課が2023年2月27日に公表した資料によると、日本政策金融公庫の実質無利子融資は16兆1千億円、商工組合中央金庫の危機対応融資は2兆7千億円、民間金融機関によるゼロゼロ融資は23兆4千億円、ゼロゼロ融資の総額は42兆2千億円になりました(2022年9月末)。そして融資の条件変更は、金融庁によると2020年3月10日から2023年12月に140万2447件実行されました。承諾率は98.9%と申請すればほぼすべて受け入れられましたから、企業にとっては最大の金融支援を受け続けることができたといえます。
ゼロゼロ融資返済で倒産増
企業業績に関係なく融資を行い、返済が苦しければ猶予する、これだけの厚い支援を実行したことに加え、税金や社会保険料の支払いも柔軟に対応したことで、コロナ禍の倒産件数は低く推移しました。
コロナの影響で借入金残高は急増したが、影響から立ち直った企業には銀行はこれからも手厚い支援を行っていきます。
しかし、黒字の見通しが立たない、あるいはまだ時間がかかる企業には次のような厳しい環境が待ち受けています。
- 返済状況と倒産増
ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産が急増しています。帝国データバンクによると20年15件、21年168件、22年386件、23年651件です。
銀行が実行したゼロゼロ融資の返済開始時期は23年7月から24年4月に集中しています。今がそうです。特に24年4月がピークとみられています。返済に耐えられない企業はさらに増えることでしょう。
そもそもコロナ前から赤字が続いていたような、いわゆるゾンビ企業にも十分な金額の融資が行われました。そのような企業はコロナ前からの借入金もまともに返済ができておらず、それに上乗せされた返済が発生するのですから、極めて苦しい経営に倒産が増加するのは明らかです。
- 金融庁は経営改善・事業再生支援の徹底を金融機関に要請
このままでは中小企業の倒産は急増するばかりです。そこで金融庁は全国銀行協会等の金融団体に対して、借換支援の継続に加え、経営改善・事業再生支援を要請しました。同時に監督指針の改正も打ち出し、企業の経営改善計画等の策定支援、企業が抱える課題解決に向けたコンサルティング機能の発揮等を求めています。
今後はリスケジュールで単なる延命にしかならないような企業を、いつまでも銀行が継続支援するとは限らなくなります。銀行は行員の能力を利益が出そうにない企業に使うのではなく、再生が進んでいる企業に集中させる方向に進んでいきます。
銀行が今まで以上に経営に関与してくるかもしれません。私の経験上、それはプラスに働くこともあれば、そうでないこともあります。
ゼロゼロ融資が簡単に受けられたし、リスケジュールもほぼ応じてくれるため、これからもそうだろうと、どうも勘違いしている経営者に出会います。これからはそんなことはないと考え、銀行からの継続支援を受けられる経営を目指さなければなりません。
企業が倒産するとき
企業が倒産するとき、まず数字に現れる現象としては、貸借対照表あれば現預金減少や借入金増加、損益計算書なら売上高の減少そして赤字の発生でしょう。さらに企業が倒産する場合、次の順番に状況が悪化していきます。
1,リスケジュール
まずは銀行へのリスケジュール(返済猶予)です。毎月の返済額が負担になっていれば、返済した分だけ定期的に融資を受け手持資金を回復させる、あるいは借り換えによって毎月の返済額を見直すことも可能です。しかし、それができずにリスケジュールということであれば、銀行は新たな融資を出さないということです。それだけ業績悪化に陥っているということでしょう。
銀行が新たな融資を出さないのであれば、リスケジュールによって資金の流出を抑えるのは企業としては当然の行動です。
2,社会保険料・税金の未納
銀行への返済をストップしてもなお資金繰りが苦しい場合、次に手を出すのが社会保険料や税金でしょう。この後出てくる買掛金や給与を未払にすれば、商品等の仕入ができなくなりますし従業員も離れていきます。一気に事業継続が困難になってきますが、これらは直接事業に影響はしませんし、すでに新たな融資が受けられないのなら税金に未納があっても問題ありません。多少遅れても厳しい督促が直ちにあるわけではないため、資金繰りの調整に使いやすいといえます。
ただ、この税金や社会保険料の未納が発生している企業の再生は一気に難易度が上がります。数か月の分割納付で解消する程度であればそう経営への影響はありませんが、社会保険料が半年以上も滞納してくれば、毎月発生する分だけでもやっとなのに、滞納分もとなれば解消は容易にいかないことは分かるでしょう。その結果、年金事務所や税務署は預金口座を差し押さえることもあります。
したがって、これらの未納が発生しそうなまでに経営が悪化したのであれば、直ちに抜本的な経営改善を行い早期に立て直さなければなりません。
3.買掛金未払
商品や原材料等があって企業は売上計上ができます。それを未納にすれば取引業者は納品をしなくなるでしょう。業界内でも代金を支払ってくれない企業として評判は広まり一気に信用を失うことが懸念されます。
しかし、どうしても買掛金の支払いが遅れたり、未払が発生したりすることもあるでしょう。当社顧問先でも一括での支払いが困難になった時がありました。長年の仕入先だと分割支払に応じてくれる先もあります。それが6カ月程度以内の短期でならいいとは思いますが、それが難しいようであれば倒産は極めて近いです。
4,給与未払
給与未払いが発生しているのであれば、もう経営を続けることはほぼ無理でしょう。数日遅れる程度でも従業員は不安になります。家族経営ならまだしも従業員の退職が発生するでしょうから経営は困難になります。
早い相談がカギ
経営悪化で悩み、当社の無料経営相談を利用される経営者さんは、リスケジュールしようかどうかあたりで相談に来られます。これなら何とか再生できる可能性は高いのですが、中には税金・社会保険料の未納、仕入先に未払いがある企業もあります。
やはり売上減少や赤字が続いている、遅くともリスケジュールあたりで相談に来ていただかないと、企業の再生は難しいことが多いです。
悪化した自社の経営を他人に知られたくないのは理解できます。銀行や近くの経営者に知られたくないのは確かでしょう。しかし、専門家に相談して改善策を実行しなければ、より悪化していくだけです。遅れるほど手が付けられなくなります。
銀行はリスケジュールでの単なる延命させるだけの資金繰り支援はいつまでも続けていかない可能性が高いです。コロナで悪化した経営を立て直そうと行動している、そして徐々にでも結果が出ている企業を手厚く支援し、そうでない企業を無理に支援しない方向なのだと認識したほうがいいでしょう。
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