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債務償還年数とは、借入金を何年で返済できるかを表す指標です。債務償還年数は、銀行員が融資先企業を財務分析する際に重視してきた財務指標の1つです。
銀行は融資案件を審査するとき、資金使途と返済能力が主な焦点になるのですが、特に返済能力は重要です。したがって、企業が借入金を利益等で完済するまでに何年かかるのかを示す債務償還年数を重視してきたのは当然のことです。
債務償還年数の計算式は、銀行によって多少異なります。経常利益は営業利益や税引前当期純利益を用いる、分子の有利子負債合計から正常運転資金だけでなく現預金を差し引く計算式もあります。
債務償還年数=有利子負債合計(1)-正常運転資金(2)-現預金(3)/キャッシュ・フロー(4)
(1)有利子負債
有利子負債とは返済義務のある借入金や社債のことをいいます。
有利子負債=短期借入金+長期借入金+社債
この借入金に役員借入金は通常含めません。
(2)正常運転資金
正常運転資金(または、経常運転資金)は次の計算式で求めます。
正常運転資金=売掛金+受取手形+在庫-買掛金-支払手形
計算式の分子ですが、有利子負債からこの正常運転資金を引きます。正常運転資金に対応する借入金は、売上債権の回収によって返済されることになります。しかし、事業を継続するには再度仕入をしなければなりませんから、そのためには新たな資金が必要であり、売上金を回収して正常運転資金の借入金を返済しても、再度、正常運転資金分の資金調達が必要になります。よって、正常運転資金は事業を行っている間は常に必要となる資金ですから、債務償還年数を計算する時は有利子負債から正常運転資金を控除するのです。
(3)現預金
分子に現預金がない計算式が多いかと思います。しかし、例えばこれから自社の業績が悪化局面に入ると予想される場合、借入金が増えてでも現預金に余裕を持たせたいと考えることがあります。
手持資金は潤沢であるにも関わらず、借入金残高が増加したことで債務償還年数が悪化する結果になりますから、現預金を控除した計算式を用いた方がいい場合もあります。
(4)キャッシュ・フロー
分母のキャッシュ・フローについてですが、キャッシュ・フロー=「利益(営業利益、経常利益、税引後当期利益)+減価償却費」が簡易キャッシュ・フローとしてよく利用されます。どの利益を利用するかは銀行によって、あるいは目的によって異なりますが、損益計算書の特別損益を控除する前の経常利益を利用すればいいかと思います。そこから税金を控除すると、分母のキャッシュ・フローは以下のようになります。なお税率は35%で考えておけばいいでしょう。
返済原資としてのキャッシュ・フロー=経常利益×(1−税率)+減価償却費
いくらのキャッシュを生み出し返済できるかを大まかに算出するには、上記の計算式で問題ありません。
利益の部分について、中小企業は出資よりも銀行からの借入金に大きく依存しているため、営業利益よりも支払利息を控除した経常利益の方がより実態を反映しているかと考えます。
しかし、多くの経営者さんが経験されているように、「利益+減価償却費=現預金の増加額」とはなりません。例えば、利益は計上できていてもそのほとんどが売掛金であれば、利益が出ているのに現預金は減少していることも考えられます。現金で設備を購入していれば、やはりその分だけ現預金は減少します。
そのため、より厳密に計算するとしたら、キャッシュ・フロー計算書でいう営業キャッシュ・フローに設備投資支出(投資キャッシュ・フロー)を加味したフリー・キャッシュ・フローが本来の返済原資となります。
フリー・キャッシュ・フロー=経常利益−法人税等+減価償却費−設備投資−正常運転資金増減
中小企業ではキャッシュ・フロー計算書は馴染みが薄いこともありますので、簡単に債務償還年数を求めるため簡易のキャッシュ・フローとして「経常利益×(1−税率)+減価償却費」でよろしいかと思います(先ほども申し上げましたが、どの利益を利用するかは銀行によって異なります)。
この債務償還年数ですが、どれくらいなら良いあるいは悪いかの基準は、業種による例外はありますが、一般的には10年以内であれば良好といえます。ただ実際には10年以内という中小企業はかなり少ないと思われますが。現在は20年以内までは認められるようになっています。
それを超えると銀行の評価は厳しくなってきますし、評価を気にしないとしても、借入金に依存する財務体質になっていますから、早期の経営改善が必要になります。
業績の悪化した中小企業が銀行から金融支援を受けられるよう計画書を作る際、この指標がよく利用されてきたのですが、10年(あるいは20年)以内にしようとのことで、できもしない計画で無理やり基準内にしようとする計画書が多く作られてきました。無理に基準内に収めようとすると無謀な売上計画やコスト削減計画を作らなければならなくなり、せっかく作っても実現可能性は低く無駄な計画となってしまいます。
しかし、銀行の対応も変化してきました。事業を継続していくのであれば一定の借入金が存在するのは正常なことであり、10年以内に完済しなければならないわけではありません。債務償還年数は返済能力を見る際の参考にはなりますし、少しでも年数が減っていくのを目標にすることは良いのですが、この指標にとらわれ過ぎないようにしましょう。
また、1期だけを見るのではなく、2~3期の平均値を見るようにしてください。
もし、債務償還年数があまり良い結果ではなかった場合は、借入金残高が多い、利益が出しにくい等の問題点があるはずです。それら問題点を解決していくため、当社では以下のサービスを提供しています。
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