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リスケジュール

資金が必要になれば銀行から融資を受けますが、審査結果によっては謝絶されることもあります。特に業績悪化が続いている、あるいは借入過多の企業は融資を受けにくい傾向にあります。その場合はリスケジュールを検討しましょう。

リスケジュールとは

リスケジュールとは、既往の借入金について、銀行への返済額を軽減してもらう等の条件変更をいいます。

中小企業は大企業と異なり、出資や社債での資金調達が難しく、銀行からの借入金に大きく依存します。しかし、収益性が低い、財務基盤が脆弱等の理由から外部環境の影響を受けやすいため、赤字や債務超過に陥りやすく、かつ毎月の返済や利息支払いが負担となり、資金繰りが悪化し返済が難しくなる事があります。

その対策として、銀行から資金調達を試みるわけですが、不可能な場合は資金の流出を少しでも抑えるリスケジュールは有効です。一度に多額の資金調達ができるわけではありませんが、返済額を軽減できますから資金繰り改善効果があります。

リスケジュールを相談するタイミング

手持資金が減少すれば経営は不安定になっていきます。早めに銀行に相談するのが理想的です。銀行に融資を相談したが謝絶され、今後しばらくは期待できないことが明確であり、かつ次のような状態になったらリスケジュールを検討しましょう。

1,資金繰り表を見ると入金よりも支出の方が多い
2,借入金返済額が負担で資金繰りを悪化させている
3,銀行への返済のために高金利で資金調達をしている

4,税金や社会保険料を滞納している
5,仕入や他の経費の未払いがある
6,ファクタリングやノンバンクからの資金調達を考えている(あるいはすでに利用している)

7,家族や親戚、あるいは知人からの借入れを考えている(あるいはすでに借りている)
8,業績回復には時間がかかるが、資金繰りが苦しく本業に集中できない


まずは銀行に融資の相談をしてください。そして、融資がどこからも受けられない、かつ1~8のいずれかに該当する場合は、リスケジュールを受け入れてもらうよう行動した方がいいです。

リスケジュールのメリット・デメリット

リスケジュールのメリットは、銀行への返済が軽減されますから、資金繰りが改善されます。

デメリットは、リスケジュール中は原則として新たな融資が受けられません。当初の約束通りに返済ができないのですから、それは仕方がないことです。

リスケジュールをしてしまうと、銀行からの融資は二度と受けられないと考えている経営者がいます。しかし、経営の改善が進み通常返済が再開されれば、融資が受けられるようになります。

また、リスケジュール中であっても経営改善が計画通り順調に進んでいれば、さらなる経営立て直しに必要な融資を出してくれることもあります。ただし難易度はかなり高いです。

リスケジュールに応じる銀行の本音

リスケジュールは当初の条件を変更してもらうことであり契約違反になります。しかし、それでも銀行がリスケに応じる本音は次のようなものです。

  • 返済面で応援するから自社の立て直しに向けた経営改善に真剣に取り組んでほしい。
  • これまで粉飾決算などをしていたら、それらの膿をすべて出し切り実態を公開してほしい。
  • いずれリスケするのなら1日でも早めに相談してほしい。手持資金がなくなってからでは遅い。


つまり「リスケは融資実行時の契約を守ってもらえず遺憾なことだが、経営者が自社の経営課題をしっかり把握し、情報はすべて開示して、経営立て直しに集中して取り組んでほしい。実現可能性の低い無理な計画を策定する必要はない。着実に経営改善が進んでいけば、リスケ中であっても前向きな資金使途については融資を検討することが可能である」というのが銀行の本音です。

リスケジュールの流れ

融資が出ないならリスケジュールの相談

銀行から融資を受けたら、当初の条件通りに返済をしなければなりません。

しかし、多くの中小企業は収益性が低く、かつ財務基盤も脆弱であることから、赤字や債務超過になりやすいといえます。そのため、資金繰りが苦しくなってしまい、返済が難しくなってしまうことがあります。

そこで銀行から資金調達をしようと行動するものの、それがかなわないケースがあります。

銀行からの資金調達ができなかったとしても、銀行よりも高い金利のノンバンク等から借りて返済を継続することは、かえって経営を悪化させますから原則的に避けなければなりません。


 

  • 銀行からの追加融資ができなくなってきた
  • 手元資金が少なくなってきた
  • 返済額が多く資金繰りが厳しい
  • 高い金利(手数料)で資金調達している
  • 税金や社会保険料を滞納している
  • 業績回復には時間がかかる

これらの状況に陥ってしまい、しかも新たな資金調達が不可能でしたら、銀行にはリスケジュール(返済条件変更、以下、リスケ)を申請し認めてもらいましょう。リスケによる返済額軽減により資金繰りは改善されますから資金調達と同様の効果が得られます。

基本的には約定通り返済しているうちに相談し、延滞してから銀行に相談することはできるだけ避けるようにしてください。やはり銀行が企業に対して持つ印象が違います。それに少しでも手持資金に余裕のあるうちに行動した方がその後の経営改善にもプラスといえます。

またリスケを申請する時は、無理のない返済額にしてもらえるよう交渉して下さい。例えば、毎月200万円返済していたとして、今後100万円程度なら何とか返済できる見通しだとしても、毎月の返済額は100万円以下で銀行には相談するべきです。手元資金があまり無いようでしたら、資金を増やすためにもしばらくは元金返済をストップしてもらうことを相談してもいいでしょう。

経営改善計画書の作成

相談を受けた銀行は、リスケジュールに応じて支援することによって今後の返済が正常通り再開できる見通しなのかを重視します。

それを審査するためにも今後どのように経営改善し、業績見通しはどうなるのかを示さなければなりません。それらの内容をまとめた経営改善計画書の作成が必要となります。

経営改善計画書にはリスケジュールに応じてもらうことにより、一時的に資金繰りが楽になり、その間に業績を改善させていき、返済が正常通りに再開できるという内容が必要です。ただし、銀行の支援を得たいからと、できもしない計画を策定するのは信頼を失うだけなのでやめましょう。

詳しくは「経営改善計画書」のページを参照して下さい。

最近は銀行側が経営改善計画書を作成してくれる場合があります。あるいは作成を求められるが、内容の薄い計画書でリスケが承認されることも多々あります。しかし、そのような支援を受けている中小企業は「自社の何が問題か」「どのような改善策が必要か」を自主的に考えず、しかも銀行からの支援が目的で計画書を作っているため、経営改善があまり上手くいないケースが多いです。

返済を少しだけ減額してもらえば資金繰りが安定する程度なら、簡単な計画書でもいいでしょうが、そうでないのなら自社の今後をよく考えて経営改善計画書を作成し、計画を実行するようにしましょう。

計画内容から融資先に回復の見込みがあると銀行が判断すれば、リスケジュールに応じてくれる可能性が高くなります。

なお、経営改善計画書の作成は、中小企業の場合、費用面で負担になる事があります。また、自社だけで作成する事は難しい面もあるでしょう。

その場合は、当社のような専門家(認定経営革新等支援機関)に依頼した場合の費用を国が補助してくれる制度があります。中小企業が悪化した経営を改善し、取引銀行からも支援を受けたい場合は利用するといいでしょう。

詳しくは、「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」をご覧ください。また、リスケ等の金融支援を受けるほどではないが、経営改善計画書を作成して経営をしていきたいとお考えでしたら、「早期経営改善計画策定支援事業」のページをご覧ください。

返済計画の考え方

リスケを実施してもらった頃は、キャッシュフロー(営業活動における資金の増減)はマイナスだったとしても、経営改善が徐々に進みプラスになってくれば、銀行への返済を検討することになります。

経営改善計画書には返済計画も含まれており、キャッシュフローのうちどれだけを返済に回せるのか、これは企業によって異なり難しい問題です。

(1)返済すべきは事業継続
リスケ中の経営者は銀行に迷惑をかけていることもあり、返済を少しずつでも進めたいと考えるでしょうし、銀行もそれを願っています。しかし、返済を優先し過ぎると手持資金がいつまでも回復しないことがあります。

そもそも赤字決算が続いた等の理由で新たな融資が受けられず、各支払いが困難になりそうなほど資金に余裕がないわけです。

リスケの目的は事業継続です。それならば、銀行への返済も大切ですが、手持資金に余裕ができるまでは返済再開を慎重にすべきです。再開するにしても資金繰りも考えた返済額にしましょう。

(2)返済額は企業によって考えが異なる
リスケ中ではあるが手持資金にゆとりがあり、キャッシュフローの全額を返済に回せる企業はまずないでしょう。キャッシュフローの何割を返済に回すのか決める際、手持資金のことも考える必要があります。

一般的に毎月の預金残高が月商の1か月~3か月分は必要だと言われます。もちろんこれが絶対ではないし、業種や各企業で異なりますが、1か月未満ではどの企業でも明らかに少ないですし、融資が受けられない状況ではそれ以上欲しいところです。

また、リスケ中の企業は設備投資が十分に行われていないかもしれません。それが原因で今後の製造販売に影響が出ると懸念されるならそれも考慮する必要があります。

このように今後の事業継続を考えて返済を再開させなければなりません。

こちらの都合を主張しても銀行から反論されることが懸念されるからと、銀行が満足する返済計画にしたのでは経営改善が進みませんし、資金繰りも不安定なままです。それでは企業と銀行が不幸になるだけの結果になる可能性が高いのです。

丁寧な交渉が大切です

リスケジュールは融資を受けている全銀行に同じ条件で対応してもらうのが原則です。複数の銀行から融資を受けている場合、一つだけ返済を継続し、他は返済をストップしてもらう、そんなことは認められません。

リスケの相談に行ったら丁寧に対応してもらえることが多いと思います。しかし、銀行も営利企業ですから、お願いされても簡単に了承してくれないケースもあるかもしれません。

経営改善計画書の内容が実現可能性に乏しいと、簡単に応じてくれないことがあるでしょう。銀行員からはいろいろ厳しいことも言われるかもしれませんが、融資を受けておきながら返済できない自社に問題があるわけですから、「弊社も返済を再開できるよう再生にあらゆる努力をしますので、どうかご協力をお願いします」という姿勢で交渉するようにして下さい。


「返済できないのだからしょうがないだろ」と当たり前のように開き直る人もいるようですが、そのような態度はリスケ交渉にはマイナスになるだけです。

ただ、お願いする立場だからといって、何でも銀行のいいなりになる必要はありません。自社の作成した計画書が実現可能性の高い内容で返済が再開できることを、一度や二度断られてもあきらめずに、丁寧にかつ粘り強く交渉する姿勢が必要です。

当社は認定経営革新等支援機関として、中小企業が取引銀行との交渉がスムーズに進むよう、そして経営改善が進むようサポートします。

自社の今後に不安を感じるようでしたら、専門家には早めに相談するようにしてください。それが資金繰りを改善させる最も大切なことなのです。

定期的な報告が不可欠

経営改善計画の内容に同意を得られリスケしてもらったら、その後は定期的に経営報告をしていきます。試算表や資金繰り表を提出し進捗状況を説明しましょう。

計画通りに行くのが想的ですが、計画を下回ることもあるかもしれません。むしろそういうケースが多いと思います。その場合は現状を正直に伝えましょう。そして計画通りに進捗しない原因と
新たな改善策。そして今後の見通しを報告してください。企業の経営状況にもよりますが、3か月もしくは半年に1回は報告してください。

リスケジュールがゴールではない

銀行からリスケを受け入れてもらい毎月の返済額が軽減されると、それで油断してしまうのでしょうか、リスケジュールが異常な状態であるとの認識が薄くなり、正常化に向けた経営改善を怠る経営者が少なくありません。というか非常に多いです。

銀行がリスケを認めたのは、一時的に資金繰りの悩みから解放し、経営者には売上拡大のための販路開拓等の前向きな業務に集中して欲しいからです。

それなのに、経営改善を怠れば自社の経営は一向に良くなりませんし、リスケジュールで支援しても結果が出せないようであれば、銀行は支援継続を打ち切ることだってあります。

「経営改善計画書を作ったおかげで銀行さんが支援に応じてくれた。もう計画書の役割は終わったからしまっておこう」と引き出しや本棚にしまっては駄目です。

リスケジュールはゴールではありません。経営を立て直すためのスタートだということを絶対に忘れないでください。

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2025/10/28

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瀬野 正博

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『決算書の違和感からはじめる「経営分析」』(日本実業出版社)