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社会保険料未納が銀行融資に与える影響

社会保険料とは、健康保険・介護保険、厚生年金保険、雇用保険を指します。ここでは社会保険料の未納が銀行融資に与える影響についてご説明します。

社会保険料の企業負担が結構大きい

経営者のみなさんは給与明細を毎月確認し、差し引かれる社会保険料が結構大きいと感じているでしょう。

それは企業も同じです。役員・従業員から徴収した社会保険料だけを納付するなら企業側の負担はありません。しかし、企業も徴収した分と同額を負担しなければなりません。

税金なら赤字や黒字でも繰越欠損金の範囲内から法人税は発生しませんし、地方税の均等割りだけです。消費税は本則課税で大赤字等の理由で控除される消費税額が大きければ還付の可能性もあります。しかし、どんなに赤字であっても人件費が発生しているなら社会保険料を負担し続ける必要があります。

給与は経費の中でも結構大きな割合を占めていますから、社会保険料額も負担になるし、資金繰りが苦しい中小企業では、毎月末の引き落としができず未納になってしまうこともあるでしょう。中小企業経営者にとって社会保険料は本当に厄介な存在です。

社会保険料未納による融資への影響

社会保険料の未納がある場合、銀行は慎重な融資姿勢になります。それだけ資金繰りが苦しいことを意味していますから、返済不能になるリスクを懸念します。確実に返済してもらわなければならない銀行としては、慎重な姿勢はやむを得ないところです。

未納が銀行に見つかるケース

社会保険料の未納について、経営者が自ら説明しなければバレないだろうと考えるかもしれませんが、決算書を見れば未納が発生していることが分かります。

貸借対照表の負債を見ると、未払費用が計上されており、その内容を見ると毎月の発生額と比べ明らかに多ければ未納が疑われます。あるいは預かっている社会保険料を預り金のままにしていることもあるでしょう。

販管費(製造業であれば製造原価報告書にも)の中に、企業が負担する法定福利費が計上されています。人員に大きな減少がないにもかかわらず、過年度と比較して法定福利費が大きく減少していれば、未納を隠していると考えられます。

また、口座の動きから社会保険料を滞納せず納めているかを確認されることもあります。

未納でも融資が受けられる条件

しかし、社会保険料が未納になっているのを理由に融資が絶対に出ないとはいえません。未納があっても融資が実行されることはあります。その条件は次のケースになります。

  • 分割納付の手続きをして合意を得て、納付誓約書を提出する。
  • 分割納付計画に基づき、今後の資金繰り見通しから納付が可能と考えられる。
  • 分割納付により未納は早期に解消される。


つまり未納があっても今後の業績見通しから早期に解消されることが認められれば、融資を受けられる可能性はあるということです。民間金融機関はプロパー融資対応が困難だとしても、少なくとも信用保証協会あるいは政府系金融機関は、少なくとも未納だけを理由に保証や融資を謝絶することはありません。

社会保険料の納付が難しくなってきたら

中小企業は資金繰りが不安定になることがよくあります。販売先が1社減っただけでも大赤字になり、資金繰りが大きく悪化することもありますから、未納にならざるを得ないこともあるでしょう。

そこで社会保険料の納付が難しくなってきたら次の対応を検討します。

銀行からの資金調達

納付が難しくなっていた頃には、すでに手持資金はかなり減少しているでしょうから、まずは銀行からの資金調達を目指しましょう。

借入金が増えることを嫌がる経営者もいますが、社会保険料の延滞金は銀行の金利よりも高いですから、預金残高が減少してきたら早めに行動してください。

延滞金の計算ですが、日本年金機構のホームページ(延滞金について)を見ますと、令和5年1月1日から12月31日までは、納付期限の翌月から3カ月を経過する日までは2.4%、3カ月を経過する日の翌日以降は8.7%です。

社会保険料を納付する目的で融資を受けたいと銀行に伝えるのは?と考える方もいるでしょう。しかし、滞納した社会保険料の解消を資金使途とした融資はめったにありません。それを目的に融資を出すケースもありますが、極めて限られた事情に限定されると考えてください。

リスケジュールをしてでも納付を優先

銀行から資金を調達しようとしたものの、何らかの理由で断られてしまうこともあります。銀行からの融資が受けられないと分かったら、元金返済額を軽減してもらい資金流出を防ぎ、その分で社会保険料の未納を防ぐようにしましょう。

すでに銀行からの融資がしばらく期待できないのですから、リスケジュールで返済をストップし、その資金で社会保険料の納付を優先します。それは年金事務所よりも、銀行の方が今後の返済計画について柔軟に対応してくれるからです。

分割納付

リスケジュール等あらゆる手段を講じたものの、未納が発生してしまうこともあるでしょう。その時は分割納付をします。

日本年金機構のホームページ(厚生年金保険料等の納付が一時的に困難となった場合に猶予制度があります)には次のように書かれています。

 

申請要件

(1)厚生年金保険料等を一時的に納付することにより、事業の継続等を困難にするおそれがあると認められること

(2)厚生年金保険料等の納付について誠実な意思を有すると認められること

(3)納付すべき厚生年金保険料等の納期限から6カ月以内に申請されていること

(4)換価の猶予を受けようとする厚生年金保険料等より以前の滞納又は延滞金がないこと

(5)原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること

 

猶予期間

猶予期間は、1年の範囲内(※)で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く厚生年金保険料等を完納することができると年金事務所が求められる期間に限られます。

※猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、年金事務所に申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。

 

その他詳しくは日本年金機構ホームページ内にある「厚生年金保険料等の猶予制度の概要」をご覧ください。

 

社保倒産の可能性

大規模な災害や経済危機が発生すると、中小企業支援策として政府系金融機関による融資、信用保証協会の保証審査について、資金繰り支援を最優先するよう国は要請します。

税金や社会保険料の納付についても柔軟に対応してくれます。未納残高は急増することになりますが、それは非常時ですから、資金繰りに困っている中小企業には助かる支援策です。

しかし、平時に戻ると特に年金事務所は、早期の未納解消を求めてきます。いくら平時に戻ったとはいえ、企業の経営が直ちに正常な状態に戻るわけではありません。しばらく時間がかかります。

年金事務所の職員はそれを理解していないのか、していたとしても自分たちの仕事を優先せざるを得ないのでしょう。次の図表をご覧ください。

日本年金機構「業務実績報告書」より

これは社会保険料滞納による差し押さえを受けた事業所数の推移です。20年度と21年度は大きく減少しましたが、22年度には19年度以前とほぼ同程度まで増加しています。さらに23年度は42,072件と急増しました。

年金事務所との交渉は極めて難しくなるケースが多いです。なぜなら、企業の経営状況を理解して支援する気はないからです。しかし、銀行との返済交渉においては、企業の経営内容を理解して支援してくれる可能性は高いです。そういう意味からも銀行への返済よりも社会保険料を優先してください。

社会保険料の未納についてのまとめ

社会保険料は税金と同様に未納があると、銀行は慎重な融資姿勢となります。しかし、早期に年金事務所と交渉をして分割納付の同意が得られれば、まだ資金調達の可能性は残されています。

未納に陥る前に銀行から融資を受けておくべきですし、日ごろから資金繰り管理に力を入れるようにしてください。

当社では税金や社会保険料の納付が難しい、銀行への返済が苦しい中小企業の資金繰り管理をサポートしています。もしお悩みを抱えてるようでしたら「無料経営相談」をご利用ください。

2024年9月28日更新

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