銀行融資を検討している経営者の方にとって、「信用保証協会(保証協会)」は避けて通れない存在です。とくに、創業期や業績の波がある局面、あるいは担保・自己資本が厚くない局面では、保証協会の保証付き融資が資金調達の現実的な選択肢になります。
中小企業の経営において、資金繰りはまさに「血流」です。その血流を支える公的なインフラが「信用保証協会」ですが、制度の変化により「保証協会さえ通れば100%借りられる」時代は2007年9月で終わり、現在では「責任共有制度」が導入されています。
かつて“原則100%保証”だった仕組みが、現在では原則80%保証、銀行も20%のリスクを負担する仕組みへ移行しています。 そのため、「保証協会付きなら通るはず」と思っていた融資が、銀行では通らないこともあります。
では、信用保証協会とはそもそも何か。なぜ100%から80%へ変わったのか。そして80%への移行が中小企業に何をもたらし、経営者は何に注意すべきか――。順に、わかりやすく整理します。
信用保証協会とは|中小企業と銀行をつなぐ公的保証人
信用保証協会とは、簡単に説明すれば「中小企業が銀行から融資を受ける際、公的な立場から「保証人」になってくれる機関」です。中小企業は、大企業に比べて財務基盤が弱く、不動産担保も不足しがちです。そのため、銀行単独の判断(プロパー融資)では、リスクを恐れてなかなかお金を貸してくれません。そこで登場するのが信用保証協会です。「公的な保証人」になってくれることで、銀行融資のハードルを下げる効果が期待できます。
■信用保証制度の仕組み
信用保証協会の保証を受けながら銀行から融資を受ける場合の流れは次のとおりです。
- 申し込み: 中小企業が銀行を通じて、または直接保証協会に保証を依頼。
- 審査: 保証協会が企業の事業性や財務状況を審査。
- 保証承諾: 審査に通れば、保証協会が「保証書」を発行。
- 実行: 銀行が企業に融資を実行。企業は保証協会に「保証料」を支払う。
- 代位弁済: 万が一、企業が返済不能になった場合、保証協会が銀行に(原則80%を)立て替え払いする。
なぜ、責任共有制度が導入されたのか|100%保証から80%保証へ
かつて、保証協会の制度は「100%保証」が主流でした。つまり、企業が倒産しても銀行の損失はゼロ。しかし、2007年(平成19年)10月より、原則として「責任共有制度」が導入され、カバー率は80%へと引き下げられ、銀行も20%のリスクを負うことになりました。
■銀行と保証協会が“責任を共有”し、融資後の支援を機能させるため
なぜ、あえて銀行にリスクを負わせるのでしょうか、その理由は銀行の「審査能力低下」と「モラルハザード」を防ぐため両者が連携し、融資実行およびその後の経営支援や再生支援を行うためです。
- 銀行の「甘え」を排除:100%保証だと銀行はリスクがないため、企業の事業内容を深く見ずに、「保証協会が保証を出せば融資をする」という姿勢になりがちでした。
- 伴走支援の強化:銀行も20%のリスクを負うことで、「貸しっぱなし」にせず、企業の成長を真剣に支援(モニタリング)せざるを得ない状況を作るためです。
つまり、国は銀行に対して「銀行も当事者意識を持って、しっかり融資後も企業の経営をサポートしなさい」というメッセージを出したのです。
■80%保証でも2つの方式があります(部分保証方式と負担金方式)
責任共有制度には、金融機関が選択する2つの方式があります。
- 部分保証方式:銀行が実行した融資額の80%を保証する方式
- 負担金方式:保証時点では100%保証ですが、代位弁済状況に応じて保証協会へ負担金を支払い、結果として部分保証方式と同等の負担(20%)を負う方式
負担金方式は保証時点で100%保証とはいえ、結果的にはどちらも銀行が20%相当のリスクを負っています。つまり、保証協会にお任せはできず、銀行も融資していい企業かしっかり審査しなければなりません。
保証協会への過度な依存が進むと、銀行は企業の事業や財務内容よりも保証しか見ないため、融資後の期中管理や経営支援への動機が失われるおそれがあります。中小企業にも問題があります。なぜなら、保証協会が保証することで容易に融資が受けられ、経営改善への意欲を失うといった副作用が指摘されます。それらを解決するためにも責任共有制度が必要なのです。
決して、責任共有制度による80%保証は、「中小企業いじめ」ではありません。
中小企業への影響
銀行にとってこの20%のリスクは非常に大きいものです。これにより銀行の審査は慎重になりました。
■銀行が20%のリスクを意識するように
責任共有制度導入後は、返済不能となり代位弁済に至った場合、20%は銀行が負担する構造ですから、保証協会が保証を承諾しても、銀行側の審査では引っかかるケースが出てきました。審査が通らない可能性が上昇し、仮に通ったとしても条件が厳しいこともあります。
■100%保証はまだある
例外的に責任共有制度の対象外となる保証制度があります。例えば、災害関係保証、創業関連保証などは今でも100%です。
特に経済危機・自然災害(リーマンショック、東日本大震災、新型コロナなど)が発生した場合、中小企業は大きなダメージを受けますから、100%保証の制度が創設されることがよくあります。
■経営者が書類で数字・根拠、計画を説明できるように
80%保証の現在は、銀行に20%の損失を被る可能性がある以上、「返済できる根拠」が薄い融資案件には慎重になりがちです。銀行員は「20%のリスクを負う価値がある会社か?」を冷静に判断します。次のような企業があったとしましょう。
・債務超過である
・2期連続の赤字
・経営計画書に具体性がない
さらには、
・試算表や資金繰り表の精度が粗い
・資金使途の説明が曖昧
・返済原資(キャッシュフロー)の説明が弱い
これでは、たとえ保証協会が前向きでも、銀行窓口でストップがかかる(または、消極的な対応をされる)ことになります。
銀行もリスクを負う以上、納得させるための材料を求めてきます。決算書だけでなく、資金繰り表や経営計画書を求められることも一般的になってきました。提出書類の高度化が進んでいます。
中小企業が注意すべきポイント
銀行が「20%のリスク」を受け入れ、中小企業が安定して資金を調達し続けるためには、経営者として以下のポイントを意識する必要があります。
■銀行が見ているのは「決算書」だけではない
先ほど、信用保証への過度な依存が銀行の事業性評価や経営支援への動機を弱める副作用が指摘され、連携強化・経営改善を進める枠組みの必要性を述べました。これは裏返せば、銀行側が「事業の中身」や「改善の実行可能性」をより重視しやすい環境になっている、ということです。
したがって、経営者側は以下を説明できる形にしておく必要があります。
- 資金使途:何に使い、いつ、どのように回収(効果)するのか
- 返済原資:利益ではなく、キャッシュフローで返す道筋
- 改善計画:コスト・価格・販路・在庫・回転のどこをどう直すか
- モニタリング:月次で何を見て、どう修正するか(運用の仕組み)
■数字は「資金繰り表」を使って説明
決算書は重要ですが、審査の現場では「直近の資金繰り」がより切実です。とくに追加融資・借換・条件変更が絡むと、銀行が気にするのは「いつ資金ショートするか/しないか」と「何を変えれば回るか」です。責任共有制度の趣旨が“融資後の支援・再生支援”まで含むことからも、融資後の経営が具体化している企業が評価されやすい方向性は読み取れます。
最低限、次の3点は用意しましょう。
- 12か月資金繰り表(実績+予測)
- 月次損益計画(粗利・固定費・営業利益の着地)
- アクションプラン(月次損益計画を達成するための具体的な施策)
■保証協会付きでも交渉の相手は原則的に銀行
責任共有制度のもとでは、保証協会と銀行が連携して支援することが目的とされ、銀行が2割相当のリスクを負担する設計です。つまり、保証協会の承諾だけで自動的に融資が決まる構造ではありません。
「保証承諾が得られたが、銀行が融資をしない言えば実行されない」ことはあるのです。あくまで融資をするのは銀行ですから、銀行向けの説明資料の完成度が成否を分けます。
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