中小企業にとって資金調達手段は、銀行融資に頼ることが多いでしょう。したがって、できるだけ銀行とは良好な関係を継続したいでしょう。しかし、企業から見て、銀行や担当者の行動に不満を感じたり、どう対応したらいいか悩むことがあったりしませんか。
そこで今回は、銀行の立場や考え方、それにどう経営者は対応すべきかを解説します。
経営者が感じる銀行への不満
経営者は銀行と長年付き合っていると、例えば次のようなことで不満に感じることがあるかと思います。
(1)銀行に融資の相談をしたら、「前向きに検討させていただきます」と言われた。しかし、前向きと言っていたのに、しばらくしたらお断りの回答だった。
(2)銀行員が「資金が必要ではありませんか」と営業してくるから、融資を限度額まで受けたところ来なくなった。
このような銀行員の対応に経営者が不満を持つのは自然のことでしょう。どんなときでも担当者とは定期的に会って相談したいことはありますから。
しかし、銀行員の行動は各自が勝手にやっているわけではありません。組織の一員として決められたルールに従っているためです。どうしても銀行の立場に立って動いた結果が、経営者には不誠実に感じるのです。
私が銀行員だった時代から今もそれはあまり変わっていません。
経営者は銀行の事情も理解したうえで備えることが必要になります。
銀行の考えや行動を理解する
銀行員がどうしてそのような対応をするのか理由は以下によるものです。
(1)あいまいな返事をするのは決裁権がないから
みなさんと日頃接する担当者には決裁権が一切ありません。相談を受けた時に「大丈夫です」と言って後で否決されたら大問題になりますし、「融資はできません」と言ったものの、審査が承認されることもないとは言い切れません。
したがって、担当者は「検討します」としか言えないのです。
中小企業は経営者がすぐに判断を下すことができますが、銀行は支店長の決済が必要です。案件によっては本部決済が必要です。その時は支店長でも大丈夫とは言えません。
(2)これからのお付き合いを考えて
これからのお付き合いを考えると、「前向きに検討します」と伝え、頑張って何とか努力したけど無理だったという印象を与えたいのです。そうすれば経営者からすれば「当社のために何とかしてくれたのだな」と思ってもらえます。
それをいきなり「御社に融資なんて無理ですよ」とその場で言ってしまえば、今後の付き合いに影響するでしょう。
(3)断る理由を言えない
融資を断る際、理由を伝えるケースもありますが、基本的に銀行員は「総合的判断」などとあいまいな断り方をしてきます。経営者は具体的に何がいけなかったのか知りたいはずです。それでも言わないのは、具体的に伝えることが銀行にとってリスクになるからです。
「赤字が続いているので」「債務超過が問題で」などと言ってしまうと、「では問題が解消されれば必ず融資が受けられるのだな」と受け取られかねません。それが解消されても他の問題で融資できないこともあります。
また、問題を解消するため粉飾決算で解決しようとする可能性もあります。だから断る理由を積極的には言いづらいのです。
(4)自社への対応が変化する
銀行員には営業目標が課されており、融資の件数や金額の目標があります。融資ができるかどうか微妙な企業に訪問するよりも、確実に融資できる企業を訪問したほうが効率的です。業績が悪化して融資が難しい先への訪問が減るのは当然です。
それに担当者は、企業に融資をセールスして限度額まで借りてくれたら、それ以上は融資ができないのですから、いくら訪問しても成績にはあまりメリットがありません。
「さんざん成績で協力してやったのに」と不満に思うかもしれませんが、これは仕方のないことです。
対応の仕方
銀行員の行動をよく理解したうえで、経営者はお付き合いしていくしかありません。ではどう対応すればいいのかをご説明します。
(1)「前向きに検討します」への対応策
銀行員の「検討します」「考えておきます」は過度に期待しないほうがいいです。次の質問をしてみましょう。
「今回の融資で必要な書類があったら教えてください」「どれぐらいで結果は出ますか」と聞いてください。もしあいまいな回答であれば、あまり期待しないほうがいいでしょう。しかし、「〇〇と△△を用意してください」などと具体的な回答があれば、稟議を通そうとしている前向きな姿勢と考えていいでしょう。ただそれでも絶対とは限りませんが。
(2)担当者が来なくなった
もう融資可能額を使い切ったので訪問してこないのは先ほどの説明通りです。担当者一人が抱える融資先が増えていることも多いので、最近は担当者が来てくれないとの不満は増えていると思います。
だからといって他行との付き合いを検討しようかというのも違うと思います。来てくれないのなら、こちらから訪問するようにしましょう。
難しいことは不要です。決算書が完成したら持って行き、10分程度でもいいから説明することです。前期はどうしてその結果になったのか、今期はどのような取り組みを行い、その結果としてどの程度の利益を目標としているかなどを説明するのです。支店で担当者に説明する際は上司にも同席をお願いするとなおいいでしょう。
期中においても試算表を定期的に提出します。それは融資申し込み時でなくてもです。
そのような自分から情報を提供する企業を銀行は評価します。銀行からの訪問が減ったとしても、継続することで関係は維持できるのです。一部の経営者は「こちらから行くのでは自分の立場が下になるから、やはり銀行員に来させなければ」と考えるようですが大間違いです。
(3)銀行から融資の提案を受けたら
当社の顧問先様であったのですが、2期連続で営業利益が赤字になったとき、取引銀行の訪問回数は極端に減りました。
しかし回復した途端、「ぜひ当行で借りてください」と銀行から何度も連絡が来ました。
そういう態度を不愉快に思う経営者もいるかと思います。しかし、銀行が「借りてください」とお願いしてくるタイミングは企業にとってチャンスですし、返済期間や金利などでいい条件を引き出しやすいです。
ぜひそんなチャンスをうまく利用し好条件で資金調達してください。
銀行の行動を理解して付き合っていきましょう
銀行は企業の敵ではありませんが味方でもありません。
銀行は「中小企業の資金繰りや経営を支援します」と言っても、無制限にできるわけではありません。ビジネスとして企業に融資をしているのですから。銀行は利益を獲得する必要がありますし、融資実行後のリスク管理もしなければなりません。
それはどの企業でも一緒です。取引先にいくらで売るのか、どのように支払ってもらうか(1か月後には支払ってもらうのか、信用力に懸念があれば販売時に現金払いをしてもらうのか)、いくらまで販売するのかを考えなければなりません。信用力に問題があれば取り引きを断ることもあるでしょう。
そこで、銀行と良好な関係を維持するためには次の点に注意してください。
(1)利益を出し良好な財務内容にしていく
このように書くと「それができれば苦労はしないよ」「言うだけなら誰でもできる」と批判してくる方がいます。しかし、何期も赤字が続いている企業で、かつ今後も改善の見通しが立たないのでは、銀行も融資はできません。
利益を出し、従業員に十分な給料を支払い、返済にも問題ない経営をしていくのが経営者の仕事です。言い訳ばかりして何もしない(できない)のであれば、融資が出ないどころか、事業継続は困難でしょう。
赤字が続くとどうしたらいいのか悩むかもしれませんが、ぜひ経営者のみなさんは幹部や従業員、そしてお近くの相談できる専門家に相談してください。
(2)財務内容の透明性を高めましょう
決算書や試算表をこちらから積極的かつ定期的に提出すること、経営内容をオープンにすることで、経営の透明性を保つようにしてください。隠し事がある企業は信用できません。
良い情報だけでなく悪い情報も開示することです。どの企業でも経営課題や問題点はありますから、むしろ開示したほうが信用されます。
(3)複数の銀行と付き合いましょう
小規模企業だからなどの理由で1行取引きをしている企業もありますが、その銀行や担当者の対応に問題があった場合、他行に相談できず一気に経営が不安定になるリスクがあります。
必ず複数と取引きしてください。銀行間で適度な競争を促すことができますし、選択肢もあるため経営者としても安心できるでしょう。